1980年代にイタリアで始まり、今は世界中あちこちに広がったスローフード運動、シカゴにも支部があります。伝統の食材や調理法を大事にしようというスローフード運動、何が「伝統」なのかよくわからない移民国家のアメリカでどう運動を展開しているのか興味があって、先日スローフード・シカゴ主催のネイバーフッド・ツアーに参加しました。「ネイバーフッド*の街」と言われるだけあって、シカゴはそれぞれの地区ごとに違った特色があるのですが、その中でも特に移民色の強いいくつかのネイバーフッドを(食べ)歩こう、というのが趣旨。その中で、私たちはメキシコ移民のたくさん住むリトル・ヴィレッジを歩くツアーに参加しました。
朝早くから強い日が照りつける当日、ダウンタウンのさらに南の26th Streetにあるメキシカン・ベーカリーに集合。Panaderia La Baguetteというこのローカルチェーン、メキシコ人の多いロジャースパークにも一軒お店があり、私たちには物珍しいお店ではありませんが、12人くらいいた他の参加者には真新しかったようです。お店の前で一通りLittle Villageの歴史を聞いた後、お店に入ってそれぞれに面白そうなパンを取ります。こちらのパン屋さんは、何が欲しいかを店員さんに告げて取ってもらう形式がほとんどなのですが、ここも含めて、メキシカン・ベーカリーは日本式にトレーとトングを持って自分で好きなものを取る方式です。メロンパンみたいなパンがあったりしてホッコリ嬉しくなってしまいましたが、メキシコのパンは日本のものに比べるとかなりぱさぱさ。好き嫌いだと思いますが、私はわざわざ買って食べたいと思うようなものには巡り会いませんでした。食べ物は皆で分け合ってこそ、というスローフードのもう一つの哲学を実践して、みんなが選んだ菓子パンやパイを切り分けて一口ずつ試すうちに、何となく会話が始まります。
次の目的地は、道路を渡ったすぐのトルティーリャ工場。El Milagro(奇跡)というブランドのトルティーリャはトウモロコシの香りが馥郁としてパトリックのお気に入りだったのですが、なんとその工場にお邪魔できるというのです。残念ながら製造工程は見せてもらえませんでしたが、その工場の一角を小売店にしたところを覗かせてもらいました。シャワーキャップみたいな帽子をかぶったおばちゃんが、こちらでマサ(トウモロコシを挽いて作ったトルティーリャの原料、写真手前に山のようになっているのがそれです)を1ポンド、あちらでトルティーリャチップを一袋、と、手際よく注文を捌いていきます。そうしている間にも、奥の工場から続々といろんな種類の(黄色いトウモロコシ、白いトウモロコシ、小麦粉、焼いたの、揚げたの、etc.)トルティーリャの箱が出荷されて、まぁ忙しそうなこと。写真を二三枚撮って、観光客は早々に引き上げました。外に出たところで、ボランティアでガイドをしてくれたダニエル(女性です)が、焼きたてのトルティーリャをみんなに配ってくれました。「これにモーレソースがあれば完璧なのになぁ」と誰かが言った通り、何かつけたほうがおいしいのはその通りなのですが、焼きたてでまだ暖かいトルティーリャを工場のすぐ外で食べるのは、やっぱりちょっと楽しいかも。完っ全に観光客ですけどね。
朝から暑いし乾燥していたこの日、トルティーリャ工場を出るころには喉がからから。26th Street沿いに点在する小さなスーパーに入ってお水を買おうかと思うくらいです。それを知ってか知らずか、次のポイントは飲み物の屋台でした。まずは、「この暑いのに、という感じだけど、ちょっと試すだけだから」と、もう一人のボランティア・ガイドのマーガレットがメキシコ版のホットココアを小さなカップに注いで回ります。チャンプラード(champurrado)と呼ばれるこのココア、なんとアステカ時代にまで遡るという飲み物で、冬のメキシコでは仕事に行く前に屋台で一杯飲んでいくのが風物詩なのだそうです。ココアの味というよりは、とろみをつけるためのトウモロコシの粉の香りと、後から加えるシナモンの香りが勝っている感じでした。うーん、私はいつものホットチョコレートのほうが好みかも。やはりこの日はとろりと暖かい飲み物には暑すぎる気候だったようで、チャンプラード売りのおばちゃんは暇そうでした。
そのすぐお向かいに店を出していたのが、上の写真のおばちゃん。大きな氷を一杯に詰めたクーラーボックスをいくつも置いて、この人は冷たいタマリンドのジュースなどを売っていました。孫らしき十二歳くらいの男の子が、額の汗をTシャツで拭きつつ、せっせと氷を削る手伝いをしています。私たちが試したのは、ラテン系の文化に興味のある人ならご存知のオルチャータ(horchata)。スペインではタイガーナッツという植物の根っこを使って作るのですが、ラテンアメリカではお米の粉を使います。これを冷たい水に溶かし、お砂糖とシナモンなどのスパイスを加え、きりりと冷やして飲む夏の飲み物。スペインにもラテンアメリカにも旅行した私ですが、恥ずかしながらオルチャータを飲むのは今回が初めてでした。先ほどのチャンプラードに似て、お米の粉の味よりもシナモンの香りが先に立って、でも乾いた喉にこの冷たさは最高です。かなり甘いので、普段飲みたいかと言われると疑問符ですが、ずっと前から試してみたかった飲み物なので、満足でした。(英語版Wikipediaによると、タイガーナッツの根っこにはナッツのような香ばしい味があるとか。スペイン版も試してみたい!)
シカゴのスローフード協会主催のネイバーフッド・ツアーはまだ続きますが、長くなってきたのでここで休憩。明日また書きます。
* 英語でいう「ネイバーフッドneighborhood」は、日本語の「ご近所」よりもかなり広い地域を指します。「町内会」の範囲よりも多分もっと広くて、感じとしては同じ町名の区域くらいでしょうか。だから、同じネイバーフッドに住んでいるからと言って、必ずしもみんな顔見知り、ということはありません。世間話をする中で同じネイバーフッドに住んでいることが分かると、何となくうっすらと連帯感を感じる程度です。同じネイバーフッドでも、幹線道路を一本渡ると全く雰囲気が違う、ということも多々あります。が、数あるネイバーフッドの中でも、特に特定の地域からの移民が多いようなネイバーフッドは、今でも彼らの出身地域の雰囲気と連帯感を残しているようなところもあり、「ネイバーフッドなんて行政上の区分に過ぎないよ」と、簡単に言ってしまえない部分もあります。
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Posted by: wow gold at 2007年11月08日 09:10