ちょっと前になるけれど、インド・パキスタン系の人が沢山住んでいるDevon Avenueにある国際マーケット見かけて買ってみたモロッコのオイルサーディン。(今、「老いるサーディン」って出たぞ...それは食べたくないかも。)昔から鯖味噌とか鰯の梅煮とか、缶詰の魚にはあまり食指が動かなかったんだけれど、なんともレトロでエキゾチックなターバンのおじさんの絵柄に惹かれて、ふらふらとかごに入れてしまいました。普通のオイル漬けと、唐辛子入りのものがあったので、辛い物好きの私は迷わず唐辛子バージョンを買いました。
箱を裏返すとアラビア語の表記になっていて、なんだかモロッコの砂漠の中の小さな街に一軒しかない食料品屋の薄暗い片隅に、埃をかぶって置いてありそうな雰囲気。日干し煉瓦でできた、窓もない建物の中には外の息苦しいような熱気も届かず、店主のおじさん(私のイメージではでっぷり系)と近所のおじさん(こちらは痩せぎす)が、一番奥のカウンターに肘をついて、ミントティーをすすりつつ、低い声でなにやらお喋りしていたりして。たかが鰯の缶詰一つでここまで想像の翼を伸ばすか!?って感じですが、ま、$1程度の缶詰でプチ旅行気分が味わえればいいかな、と。
どう食べるかしばらく思いつかず、食料庫に眠っていましたが、キャベツと合わせてペペロンチーノ風にしよう、ということでこの間めでたく発掘。缶を開けてみると、きっと小指くらいのサイズのちっぽけなのが沢山入っているんだろう、という私の予想を覆して、まるまる太った大きなのが二つ、缶からはみ出さんばかりになって入っていました。「犇(ひしめく)」という字を思い出す感じね。ウロコがかなり残っていたので、菜箸でこすって一通り取り除き、油を切って大まかに身をほぐしながら、恐る恐る一口つまんでみました。
そうしたらなんと驚き、美味しいじゃぁありませんか。(美味しくないと思うんならなんで買ったんだ、って感じですが...。)全然魚臭くないし、缶詰特有の変な味もしません。これがほんとに鰯?というくらい、風味はあるのに癖がないのです。これなら変にパスタなんかにしないで、大根おろしにお醤油でも美味しく食べられそう。さすがにこの日はメニュー変更には遅すぎたので予定通りパスタにしましたが、今度買ったら絶対に大根おろしで!と思っています。
スルタンのペペロンチーノ (モロッコサンオイルサーディンとキャベツのパスタ)
オイルサーディンは油を切って、身をほぐしておきます。キャベツはざく切り、ニンニクはみじん切り。パスタを茹でるお湯を湧かし始め、フライパンにオリーブオイルとバターを熱します。お湯が湧いたら、塩ひとつまみとスパゲティーを投入し、フライパンでニンニクと唐辛子を炒めます。
時々スパゲティーをかき混ぜつつ、キャベツを炒め、少し火が通って来たらオイルサーディンを入れます。キャベツの歯ごたえを残した状態の時にパスタがゆであがるのが理想。スパゲティーをフライパンに移し、オリーブオイルと絡め、塩・胡椒して出来上がり。
オイルサーディンの塩気が思ったより薄かったので、もう少しパンチがあってもいいかな、という味になりましたが、キャベツの甘みが引き立つ、ほっこり系のパスタになりました。意外とお醤油を一垂らししても合いそうです。そうなると、モロッコの鰯を和風にイタリアのパスタと合わせる(しかもアメリカ産のキャベツとともに)という、なんとも現代を象徴する、良くも悪くもグローバルな一皿になりますね。
Continue reading "スルタンのペペロンチーノ"シカゴのガイドブックを読んだことのある方ならご存知だと思いますが、シカゴ名物の一つにディープディッシュ・ピッツァというのがあります。深さ三センチくらいの鋳鉄のピザ焼き皿に生地を敷き詰めて、その中にトマトソースと具、それにチーズをどぉーっさり詰めて焼いたもの。薄めの電話帳くらいはあるその厚みのほとんどはチーズなわけで、一切れ食べきる前にお腹いっぱいになってしまうくらいの重いピザです。こちらに来たばかりの頃に、私もジョルダーノスとか、ジノズ・イースト、それにピッツェリア・ウノなど、いくつかディープディッシュ・ピッツァの有名なお店に行ってみましたが、正直言ってお金を払ってまで(もしくは余計なカロリーを摂取してまで...笑)食べたいものじゃありませんでした。そんなに大量にチーズを入れるんなら、もっとおいしいチーズを使えば?とか、ちょっと意地悪なことを言いたくなったりして...。
そんなピザ砂漠のシカゴですが、最近になって激ウマピザ屋をいくつか見つけました。なんと言っても堂々第一位は、イタリアからピザを焼く窯(と、そこでピザを焼く職人)まで直輸入したというこだわりのスパッカ・ナポリです。このピザ屋さん、日本のおいしいピザ屋さんにも全然負けてません(って比較の対象が変ですが)。イタリアで食べたピザにも引けを取らない、まさに掃き溜めの鶴的存在。ところが、いかんせんあまりのおいしさに、いつ行ってもおバカな私は写真を撮るのを忘れてしまうのです(いつもおいしいワインで酔っぱらってるから、という噂もあり)。そう言うわけで、スパッカ・ナポリのお話はまた今度。
で、今日の本題は、エヴァンストンにあるピザもおいしいイタリアンレストラン、トラットリアD.O.C.です。D.O.C.というのは、イタリアの地場産物の品質管理システム。日本でも地鶏の銘柄を全く関係のない会社が勝手に使ったりして問題になったりしましたが、そういうことを防ぎつつ、地元で長い時間をかけて培ってきたワインやチーズ、サラミなどの品質(とその生産者)を守っていこうというものです。そんなD.O.C.をお店の名前に採用するくらいなので、このトラットリア、きっと食材にはこだわっているはず(と、私は勝手に思っています)。
パスタもセコンドも何でもおいしいトラットリアですが、ここのおすすめは何と言ってもピザ。生地が違います。「外側」とか「中側」と格別できないくらいの薄生地なのに、それでも外側はぱりぱり、中側はモッチリの偉業を達成しています。所々ぷっくり膨らんだところが焦げて、それがまたおいしいんです。今回はソースなしのローズマリー・ポテトピザを頼みました。じゃがいもの土臭い甘みにローズマリーの香りがぴりりと利いて、もう最高。じゃがいもの端っこが焦げたところはまるで自家製ポテトチップみたいにカリカリで、イモ好きイモねえちゃんとしては口福の至りです。とろけたモッツァレラチーズはバターみたいな深みのあるこくがあって、言うことなし!
おいしいピザもさることながら、今回の発見はスペシャルメニューの中から頼んだfiori di zucca、ズッキーニの花のイタリア風天ぷらでした。(イタリア風天ぷら、なんて言うとどうも垢抜けませんが他に言い方が思いつかない...やれやれ。)酢の利いた爽やかなサラダの上に載って出てきたフリットは、中にモッツァレラチーズとアンチョビが入っていて、単体では特に癖のないズッキーニの花が、とっても面白い味になっていました。アンチョビの塩気と、かすかな海の味がなかなかいいんです。イタリアではリコッタチーズと卵黄を混ぜたものを詰めるらしいので、このD.O.C.バージョンはほっこり系の本家よりも少し冒険心旺盛な感じですね。衣も、ふんわり軽いのにモッチリ感があって、とてもおいしかったです。そんじょそこらの天ぷら屋で食べる天ぷらよりいけるかも...。
中を切ってみると、加熱して濃くなったズッキーニの花の黄色が、モッツァレラチーズの柔らかな白に映えて、とてもきれい。目にもおいしい前菜でした。今回はパトリックとシェアしましたが、これなら一人で一皿軽くいけちゃいます。いや、いっちゃいけないんですが。去年ここにきた時にイカのフリットを頼んで、あまりのおいしさにびっくりしたのですが、どうもこのレストランは揚げ物がとても上手なようです。イカのフリットも、ちょうどいい塩味が利いていて、衣はさくさく、中のイカはあくまでも柔らかで、タダモノの技ではありませんでした(笑)。アメリカでイカのフリットを頼むとだいたいマリナラ・ソースが付いてきますが、そんなもの付けなくっても十分いける味。こちらは通年メニューなので、ズッキーニの花を逃してしまったら、お試しあれ。
もう一つ頼んだ前菜、牛肉のカルパッチョは、新鮮なルッコラとこくのあるパルメザンチーズがごっそり載っていたのは嬉しかったものの、レモン汁の味がお肉の味を完全に消してしまっていて、ちょっと合格点はあげられませんでした。でもそれも、他が完璧だから目立ってしまう瑕疵、という程度のもの。D.O.C.では、ほぼ何を頼んでも外れはないと思います。涼しくなってきた夕刻、歩道に出したテーブルで湖からの風を感じつつ、おいしい前菜をつつき、ワインを飲んで、ちょっと酔いが回ってきた頃に出てくる熱々のピザを食べる幸せはシカゴの短い夏ならでは。自然光だと、写真もきれいに撮れるしね。
郊外に住んでいる私の両親にとって、ウィッカーパークやレイクヴューのようなおしゃれなレストランのたくさんある地域は、気にはなってもなかなか行けないところです。駐車場の問題もあるし、かといって公共の交通機関を使って行けば、一度ダウンタウンに出て、それから戻る形になってしまうし、で、億劫になってしまうのも分かります。距離的には遠くても、逆にダウンタウンに出るほうが楽だったりします。そんな両親が都会に出てくると(笑)、せっかくダウンタウンに来たのだから、なにかおいしい、変わったものを食べたい、ということになるのですが、困ったことにシカゴのダウンタウンにあるのはほとんどが超高級料理店か、大して面白くもないどこにでもありそうなレストラン(しかも往々にして高い!)。アメリカ人でもこう思っている人は沢山いるんじゃないかと思いますが、ダウンタウンでおいしくて、肩の凝らない雰囲気で、かつ良心的な値段のレストランを探すのはなかなか大変なのです。
そんなダウンタウンで、自信を持ってお勧めできるのがAvec。とあるシカゴの女性向けの情報誌でインターンをしていたときに、過去の記事の中から見つけたお店なのですが、ちょっとおしゃれだけど気取らない、かつおいしい料理を出してくれる、何とも嬉しいワインバーです。場所も、郊外通勤列車Metra(メトラ)の、Oglvie駅のすぐ裏、という便利な立地で、ダウンタウン探索の後にちょっと寄ってお腹を満たすには最適です。
このAvec、Blackbirdというシカゴでは評判の高い(こちらはかなり高級)レストランの弟分のような存在で、Blackbirdのオーナーやシェフが考案した独創的な料理を、より気軽に食べられます。ウナギの寝床のような細長い店内には、カウンターが一つと、これまた細長い木のテーブルが壁に沿って並び、隣に座った人と肘付き合わせて飲む、という方式になっています。仕掛けは居酒屋のようですが、自然な色の木と、緑のガラスを中心とした店内は、とてもモダンな空間。メニューには、フランス、イタリアにスペインを中心とした百種近いワインに合わせて、地中海を囲む国々の料理にヒントを得た創作料理が、大皿と小皿に分かれて並んでいます。
ここでは、タパスバーのように、大人数で行って適当に見繕って注文、出てきたものをみんなで分けて食べる、というのが正しい食べ方。周りを見回しても、みんなそうしています。料理を決めて、ウェイトスタッフに聞くと、どんなワインが合うか教えてくれます。我らがウェイター君の勧めに従い、私たちは、ペッコリノというチーズみたいな名前のブドウから作った、カルドラというイタリアの白ワインで始めることにしました。飲んでみると、さっぱりと辛口で、かといってつんけんしたところがなく、後味はかすかにフルーティー、とてもおいしいワインでした。小さなカラフェで頼みましたが、辛口白ワイン好きの私としては、大きなほうにしておけば良かったかしら、と思ってしまいました。
私がAvecに行ったのは二度目でしたが、平日の五時半頃にもかかわらずほとんどの席が埋まっていて、しばらくすると列ができるほどのにぎわいでした。(ダウンタウンのワインバーなので、ひょっとすると平日のほうが混んでいるのかもしれません。)そんなこともあって料理が出てくるのには若干時間がかかりましたが、ワインを飲みながら周囲のおしゃれなお客さんを観察したり、一緒に行ったパトリックと彼のお姉さんと下らない話をしているうちに時間はあっという間に経ってしまいます。最初に出てきたのが、スモークした豚肉とブラック・アイド・ピーを使ったサラダ。一緒についてくるフォカッチャ風のイタリアンパンがとてもおいしくて、何度もお代わりしてしまいました。
さっぱりしたサラダと一緒に出てきたのが、ブランダーデというフランスのクリームソースのようなもの。塩漬けにした鱈を戻して、じゃがいもを加え、牛乳や生クリームで煮込んだ、かすかに潮の香りのするリッチなクリームを、かりかりに焼いたトーストにつけて食べます。なんだか知らずに頼んだのですが、これが大当たり。カロリーやらコレステロールやらを考えると、とても食べられた代物ではありませんが、塩漬け鱈に生クリームがとにかく良く合って、これだけあればパンをいくらでも食べられそうでした。塩漬けの鱈はなかなか手に入りませんが、塩鮭なんかで代用できるのかしら、なんて考えつつ食べました。
ここでワインを赤に替えて(銘柄は忘れました)、次の皿を待ちます。しばらくして出てきたのは、赤ワインを使った自家製ソーセージに、ピスタチオと黒ぶどうのプリザーブが載ったもの。ローズマリーの香りのするポレンタにのっていました。味の組み合わせ的にはそんなに感動するほどではありませんでしたが、お肉の粗挽き感が、やっぱり自家製な感じでなかなか。
最後はタスマニアの鱒をケイパーでソテーしたもの。ちょっとぴりっとするスパイスで味付けしてあって、臭みもなくおいしく食べられます。マスタード・グリーンという独特な味のする野菜と一緒に。上にのった素揚げのレモンが「!」でした。
Avecでは頻繁にメニューが変わるので、私たちが食べたものがいつもメニューにあるとは限りません。(前回行ったときに食べた、ホースラディッシュとパースニップのピュレとコクのあるチーズにルッコラがごっそりのったブルスケッタがとてもおいしかったのですが、豈図らんやそれは既にメニューから消えていました。)大のお気に入りの料理ができてしまうと辛いところですが、毎回違うものが試せるのは嬉しい、とあって、これも一長一短。基本的には何を頼んでもおいしいんですけどね。今回私たちが頼んだのはみんな小皿料理でしたが(サイズ的には日本の小さめの一人前くらいの量があります)、他のグループのチョイスを横目で見たところ、ピザやパスタなどの大皿料理もおいしそうでした。小皿は8〜10ドルくらい、大皿は12〜15ドルくらいで、四人で小皿を四つ五つ取れば、かなりお腹いっぱいになります。今回はみんな腹ペコだったこともあって、三人で85ドルとちょっと高めになりましたが、これでワインもコーヒーもデザートも入っているんですから、文句は言えませんよね。
大皿と小皿以外にも、好きなものをチョイスできるサラミやチーズのプレートなどもあります。チーズのプレートを頼むと、そのチーズに合わせて杏のジェリーやナッツといったおまけがついてきます。う〜んおいしそう。シカゴのダウンタウンに行くときには、ぜひ試してみてください。
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Avec
615 W. Randolph Street
312.377.2002
Oglvie駅からだと、駅の西側の通りを北上して、Randolphで左折して西に向かいます。そこから数ブロック行った左側(南側)の、大きなガラス窓のお店です。ループからなら、Randolphをひたすら西に進むだけ。簡単です。
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